忘れられぬ教訓。今から5年前,1匹のリスが電源装置に入り込み,黒焦げになっている間に,ナスダックは完全に取引をストップしていた。バックアップ電源への切り替えに失敗したのだ。あの時と比べ爆発的に取引量が大きくなった今,もし同じ事故が起こったら,世界は混乱へと突き落とされる。
米国最大の電子証券取引所ナスダックが,16日の午後3時40から17分間,システムがダウンし,取引を処理できなかった。ナスダックのスポークスマンは,午後4時の取引終了間際の大量の処理をするするため,ソフトウェアをアップデートする必要があったと述べている。この日,ナスダックは金利の引き下げなどを受けて,過去最高出来高の14億株を上回る,14億8000万株の取引を行なった。
ナスダックは,テクノロジー関連企業が多く上場し,現代経済の一翼を担っている。米国の証券取引所では,ニューヨーク証券取引所に次いで2位の取引量をさばいており,もし,ここがトラブルに巻き込まれたら,ただではすまない。…ナスダックは取引を行なうのに,ひとりの人間も介さない。怒号も飛び交わなければ,電話も鳴らない。ただカチカチカチと,システムがディスクにアクセスする。そんなだからナスダックは信じられないほど堅牢なシステムを構築している。合計4つのバックアップ電源装置を持ち,6,7分もほっとくとオーバーヒートするシステムのため,2つの冷却装置を備える。
その堅牢さは,もしこのシステムがストップした場合に,どれほどの混乱が起こるかを予期してのもの。経済的な混乱は,ささいな不安感が,世界的な恐慌をも引き起こす。ナスダックが,次の恐慌の発信源にならないとも限らない。ワイヤードの混乱が,リアルの混乱へと容易にシフトしうる,現在では,という一例。
|